高金利下の株式市場の上昇。市場環境の好転か?危機の前兆か?踊り場に差し掛かった相場について考えます。 ブログ1975回

J&H HOME(株)小野弘志です。東日本橋は晴れ。太平洋には3個の台風が同時に発生しています。10月に3個の台風が同時に発生するのは5年ぶりです。大型で強い台風27号は小笠原近海から日本の東を進む予想で、小笠原諸島や伊豆諸島、関東では高波に警戒が必要です。台風28号と29号は西よりへ進む予想で、今後の動向に注意が必要です。

昨日のグローバル市場は、株価が上昇日経平均株価も1時70000円台を回復しました。しかし金利は髙どまったままです。市場は金利先高感(イールドカーブの急峻化)を予測しています。金利上昇は通常株価には悪化要因です。6月から下げ相場が続いていた市場の反転を好感する記事も多いですが、マイナスのシナリオも考えてみる必要があるかもしれません。
【市場の歪み】高金利下の株高は「下げ相場の終了」か、それとも「1987年の再来」か?
昨日、南米ブラジルで行われた大統領選挙の第1回投票において、市場流動性に配慮した構造改革(歳出削減や減税)を掲げる右派のフラビオ・ボルソナロ上院議員が予想を覆して首位に立ち、決選投票への進出を決めました。これを受け、週明けの市場では「ブラジル・リフレ相場」を想起。ボベスパ指数は急騰し株価は1時8%以上上昇しました。通貨レアルも対ドルで4%以上も急伸しています。一見すると、世界的な高金利環境が続く中でも、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)や政治的期待によって「株価はまだまだ上がれる」「半年に及ぶ下げ相場は完全に終了した」かのように思えるかもしれません。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)やブルームバーグ(Bloomberg)といった世界的金融メディアの論調を読むと、現在の市場が内包する「危険な歪み」が見えてきます。私たちは今、単なる強気相場ではなく、歴史的大暴落の直前に酷似した「薄い氷の上のダンス」を目撃している可能性があります。
1. 高金利下で株価が上がる「表と裏」
従来の経済学のセオリーでは、金利の上昇は企業の資金調達コストを増加させ、株価を押し下げる「重力」として働きます。しかし現在、その重力を跳ね返している要因は主に2つあると考えられます。一つは、米国を中心とする世界経済や個人消費が、高金利下でも強い事です。そしてもう一つが、「AI相場」への期待です。「AIがもたらす将来的な生産性向上が無限であるならば、目先の金利コストなど些細な問題」という投資家心理が市場を支配しています。しかし、ブルームバーグのコラムニスト中南米のビジネス・経済・政治を専門にカバーしているファン・パブロ・スピネット(Juan Pablo Spinetto)氏は、昨日のブラジル市場の急騰に対しても冷徹な視線を向けています。市場は右派の財政改革を期待していますが、同国の巨額の公的債務を安定させるには、掲げられている公約以上の歳出削減が必要不可欠です。もしこれが「期待先行の幻影(ミラージュ)」に終われば、さらなる金利上昇を招き、周辺国(新興国)発の債務クラッシュを誘発しかねません。政治的な期待による局所的な株高は、世界的な高金利というマクロの重力を根本から消し去るものではないのです。
2. 1987年「ブラックマンデー」に酷似する市場環境。
現在の市場環境を俯瞰すると、1987年10月に世界を震撼させた「ブラックマンデー」の直前期といくつかの共通点(構造的類似性)が浮かび上がります。
第一に、「欧州の金利上昇と足並みの乱れ」です。現在、フランスは政治の空転から財政赤字のコントロールを失いつつあり、ドイツ国債に対する利回りスプレッド(上乗せ金利)が急拡大しています。1987年の大暴落直前も、米・独・仏の間で金利や為替を巡る対立が起き、欧州の金利上昇がグローバルなパニックの引き金となりました。
第二に、「市場の極端な狭さ(二極化)」です。ブラックマンデーの直前も、市場の主要指数は最高値圏にありましたが、実際に買われていたのは一部の超大型ブルーチップ株だけで、中小型株は数ヶ月前からすでに下落を始めていました。これは、現在の市場でS&P500の構成銘柄の多くが低迷する中、NVIDIAやMicrosoftといった一部のAIメガテック企業だけが指数を強引に釣り上げている「歪な強気相場」の構図と完全に一致します。
当時の市場も「経済が強いから高金利でも株は買いだ」言われていましたが、債券利回りが一定の限界点に達した瞬間、「リスクを冒して株を持つより、確実な金利を得られる債券に移るべきだ」と投資家のマインドが一夜にして大反転し、大暴落へと繋がりました。
3. 水面下で進行する4つの致命的リスク
WSJやBloombergの論調が指摘する通り、現在の株高を「下げ相場の終了」と楽観視できない理由は、水面下で以下のリスクが着実に蓄積されているからです。
  • 逆イールド解消: 歴史的に、株価のクラッシュは「長短金利の逆転(逆イールド)」が発生している最中ではなく、景気悪化に伴う急な利下げによってそれが「正常化に向かう瞬間」に起きています 。
  • シャドーバンキング: 規制の及ばないプライベート・クレジット(民間融資)市場では、高金利の長期化によって新興企業や不動産案件の破綻(デフォルト)が可視化されないまま積み上がっています。
  • 商業用不動産(CRE)の満期: コロナ前の低金利時代に組まれた巨額の不動産ローンが、今まさに現在の「高金利」での借り換えを迫られており、地方銀行への直撃(第2波)が懸念されています。
  • 保護主義の再燃によるスタグフレーション: 各国での自国第一主義の台頭に伴う関税合戦は、せっかく落ち着きつつあるインフレを再燃させ、中央銀行の「利下げという救済策」の手縛りとなるリスクがあります。
昨日の市場の動きは、確かに楽観視できるものでした。しかし、主要メディアの冷静な論調が示すように、現在の相場は「底打ちからの反転」ではなく、高金利と共存している「嵐の前の静けさ」である可能性を排除できません。一部のメガテックや政治イベントの熱狂に目を奪われることなく、フランス国債のプレミアム拡大や新興国の債務動向、そしてFRB(米連邦準備制度)の政策スタンスといった「金利の動向」を定点観測し、いつでも動ける防衛手段を持っておくことが必要と感じます。
(出典:Wall Street Journal / Bloomberg / Reuters 報道・コラムより) 2026年10月6日

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